安いドライブレコーダの品質

あおり運転や事故の記録としてドライブレコーダが話題になっている。
Amazonを見ると、2つのカメラで前後を記録できるタイプの中国製ドラレコが4000円台でいろいろ販売されていた。国産品は2万円程度で価格差は大きい。国産品はGPS機能がついていたり、安心の品質ではあるのだが、中国製の5000円以下は魅力的でダメモトで試してみたくなった。(2019年2月)

Amazonのカスタマーレビューの数が多く、比較的評価が高いものを選んでみた。

    • フロントカメラはF1.8、170度広画角
    • 4インチモニター
    • フロントの画質は1920*1080P(フルHD)/30fps
    • リアの画質は640*480P(VGA)

日本語のまともなマニュアルが付いていた。リアカメラは接着固定する様になっていたが、取り付けプレートが小さくすぐ剥がれる。上から押さえるような工夫を要したが、それは、予想されたことで許容範囲内。

しかし、残念ながら、致命的な欠点が2つあった。

    1. 組込のF/Wのできが悪く、録画像と録音が同期せずずれていること(ソフトウェアの欠陥)
    2. カメラの中の部品が車の微振動で揺れ、雑音として録音されること(ハードウェアの欠陥)

である。
カスタマーサポート窓口の対応は丁寧で非常によく、結局最後はこちらから要求する前に返金になった。フロントの画質はよかったのだが、この欠陥には愕然。

(1)録画と録音の非同期問題

録画は最大5分毎にファイルが分割されて記録される。フロントとリアは独立した別ファイルになり、別のホルダーに保存される。
ところが、デフォルト設定で、録音された音が録画に同期しておらず、フロント動画(MOVファイル)では音が画像より早く進む。(動画の終わりの方では音が先に終わって無音動画になる。)

一方、リア動画(AVIファイル)では逆に録画が録音より速く進む。(動画が静止した後も音が続く。)

カスタマーサポートに問い合わせると、この問題を認識していて改善F/Wを送るので、アップデートしてみて欲しいという。送られてきたF/Wをカメラにインストールしたところ、デフォルト設定でフロント動画の音ずれが無くなったが、リア側の音ずれは直らなかった。
F/Wにはその外にも問題が見つかった。

  • 違うF/Wに変わったにもかかわらずF/Wのレビジョンが同じままだった。(レビジョン管理がいい加減)
  • 動画の仕様は30fpsだが、ファイルは25fpsだった。(メーカも認識)
  • 実際の録画時間が短くなっても(例えば1分で終わっても)ファイルサイズが変わらない。
    5分設定のMOVの場合常に845948kB=826MB(165MB/min)となり、ファイルサイズが大きい。

(2)録音ノイズの問題

録音に、小さめのジャリジャリ音や、パタパタパタというような比較的大き雑音が時々不規則に乗る。(これがその音の一例。TBSラジオの音に、車の走行音と雑音がかぶさって録音されている。)
初めは電源ケーブルから電気的ノイズを拾っているのかと思ったが、フェライトコアのノイズフィルタを付けてみたりPCから短いケーブルで電源を供給したりしても変わらなかった。
カメラ本体を振るとカタコト音がし、マイクが部品の振動を拾うらしいと見当が付いた。
カメラを付属の吸盤付きの支持棒でフロントガラスに固定すると車の振動が直接カメラに伝わる。車の振動をカメラに伝え難くする実験をした。

まず「ドライブレコーダー ホルダースタンド 5種類アダプター付き」という取り付け部品をAmazonで中国からの送料込み300円以下という嘘のような低価格で購入した。
バックミラーの支柱にこの固定具を取り付けるときにぷよぷよする耐震GELクッション(エラストマー樹脂)を挟んで車の微振動がカメラに伝わり難くしてみた。
その結果、パタパタパタ音はしなくなり、小さいジャラジャラ音が聞こえるだけになった。
GELクッションに雑音低減効果があったので、車の振動でしっかり固定されていないカメラ部品が揺すられ、そこから生じる音をマイクが拾っていたと判断した。
しかし、ふらふらしすぎで画面のふらつきが大きくなってしまった。実用的対策ではない。
この実験の前に、「雑音は個別不良」とみたカスタマーサポートから代品のカメラが送られてきたのだが、雑音の発生具合は1台目と同じで改善されなかった。(ハードウェアの共通問題と思われる。)

(この代品カメラのF/Wレビジョンは最初に送られてきたカメラのレビジョンとまったく異なる文字列表示だった。F/Wのアップデートをこのカメラにも適用してみたところ、モニター表示が左右裏返し(鏡像)になってしまった。見かけが同じでもハードウェアに微妙に違いがあり、共通のF/Wが使えないという混乱状態であることが明らかになった。)

まとめ

幾らカスタマーサポートがしっかりしていても、この設計品質では受け入れられない。
F/Wのできがお粗末すぎ、製品として許容できないレベルである。
フロントは170度の広角が謳われていて、この点はよいが、リアのVGA画質は悪すぎ、全体のバランスが悪い。
レコーダの画像写真はこちら

4インチモニターのカメラ本体はドライブレコーダーとしてはやや、大きすぎる。

ドライブレコーダの代金は返金されたが、ドライブレコーダにかなりの時間を費やした。
安いmicroSDでは繰り返し記録の耐久性がないので3000円近い高耐久性SDも買った。(Samsung ドライブレコーダー向け microSDカード32GB 正規代理店保証品 MB-MJ32GA/EC )
(32GBのmicroSDメモリ付き・前後2カメラのドライブレコーダを5000円前後で販売している機種があるが、この場合microSDメモリ代金は1000円以下であり、これでは耐久性不足ですぐ使えなくなると思う。)

他の5000円前後の製品にまともなものがあるかもしれないが、同クラスの別製品を選び直しても仕様を満たさない欠陥品をつかむリスク大と判断し、予算オーバーになるが9000円超えのApeman社のC860に買い替えてみた。この製品はマニュアルが簡略過ぎるが、今回のような問題は皆無で、まともであった。
このレコーダのフロントとリアの画像例はこちら。

Amazonのカスタマーレビューも、ドライブレコーダの場合は余り頼りにならない。

返金され、カスタマーサポートの対応がよかったので、このメーカー名を挙げて非難するのは遠慮した。こんな製品でもカスタマーレビューの評判が比較的よいのは不思議である。

技術者倫理として、この欠陥について黙っていてよいのか迷うが、同クラスの他社製品をチェックしている訳ではないので、1社だけを非難することにも抵抗がある。