技術士試験の変更とその対策

私はこれまで一番最近の試験制度を体験したということで、その受験体験を語ってきましたが、今年2013年(平成25年)から技術士試験が変更になります。特に、今まで受験準備の重点の一つであった経験論文(技術的体験論文)の廃止は影響が大きいと思います。

【試験方法変更の狙い】

技術士の数が米英に比べて少ないので技術士を増やすこと、また特に若い技術士を増やすことが課題とされてきました。しかし、試験を易しくして合格者を増やす安易な手段は 技術士の質を低下させるので、禁じ手です。
そこで、受験者の負担を減らすことにより、受験勉強の負担が大変だからと受験をあきらめていた人を受けてみようという気にさせて、受験者を増やすという方法が採用されました。2007年の試験の変更(経験論文を試験会場で書かなくてよい)もその狙いで行われました。
今回の変更はこれを更に推進するためのものと考えられます。
経験論文の廃止は、かなりの負担軽減と思います。(私は経験論文だけの受験指導講座を受けましたが、それが不要になります。)これにより、受験者は増えると思います。
後述のように、平成12年の技術士法改正により一次試験が必須になったことは、受験者の負担を減らすことに逆行しますが、これはAPECエンジニアなど海外の制度との整合性を高めるためのものです。(注1)

技術士試験に詳しい先輩は以下のような意見でした。

  • 技術士試験は経験を重視していたが、国家試験で経験内容を判定に含むものは技術士以外にない。
  • 経験論文をやめるということは、経験重視をやめるということで、試験は35才以下の若い人に有利になって行く。
  • 筆記試験は難しくなる。いずれ実務経験7年も無くなるのではないか。50才以上で合格は難しくなる。

私の考えは少し異なります。APECエンジニアも7年の実務経験を要件としているので、実務経験7年が無くなるとは思いません。筆記試験の難度は従来並と思います。
ただ、経験より専門知識重視・専門的実務能力重視になり、若い人が有利ということは確かでしょう。
試験の内容が変わるため、過去の問題から予想がつかない不利があり、今年に限っては昨年までより難度が高くなるでしょうが、それは今年だけのことだと思います。

【過去の試験方法の変更履歴】

技術士試験はこれまでも何度も見直しされてきました。
第一回の技術士試験は1958年(昭和33年)に実施されましたが、その後1983年(昭和58年)に技術士法が全面改定されて技術士補制度が導入され、技術士補のための一次試験が1984年から実施されました。
2000年(平成12年)には技術士法が一部改正され、その3年後の2003年からは一次試験が二次試験を受けるための必要条件になりました。(ただし、JABEE認定の教育課程修了者は一次試験免除です。)
2007年(平成19年度)からは、筆記試験の一部として実施されていた経験論文が筆記試験後に提出することに変わりました。
(私が二次試験を受験したのは この2007年でした。)

【今年の試験の準備】

一次試験は共通科目が廃止されましたが、これは理工系大学卒業者の場合は免除でしたので、ほとんどの受験者にとっては実質関係ありません。基礎科目の範囲が若干広くなり、その分問題が増えています。しかし、全問に回答する必要はなく、答えられそうなものを選択するので、過去の問題に対する勉強をしておけばよいと思われます。今までにない問題が出て答えられなくても、それはパスして別の問題を選べばよいのです。

二次試験は技術的体験論文の代わりに選択科目の課題解決能力を見る記述式問題が追加になっています。口頭試験でもこの論文を話題に取り上げると言っています。準備としては従来通り過去の問題に対する記述を実際に試してみることしかないでしょう。記述問題に対する回答の練習をすることで、論文作成能力を向上させ、専門知識をブラッシュアップすることができます。「課題解決能力」は「実力+書き方の訓練」で対応するしか無いと思われます。
従来は経験重視で審査していましたが、今後は専門分野の現在の課題とされるものに対する論述をベースに判定するようになるのでしょう。課題解決能力を問う筆記試験で「ものを見る目が的確」と思わせるような論文を書けるように練習しましょう。
択一問題が復活しましたが、18年以前の択一問題と同じようなものと考えてよいでしょう。(平成16~18年の択一問題が技術士会のホームページに掲載されています。)択一問題への準備は程々にして、記述問題中心に準備するべきでしょう。

【業務経歴票の基礎資料を早めに準備】

経験論文を止める代わりに、業務経歴票の形式を 技術的体験をより詳細に記述できるものに変えると述べられています。従来同様 経歴については、いつ頃どのような技術に関わってきたかを事前によく整理して書き出すという準備を早めに(3月中に)しておくことが重要です。
その中で、この人物は技術士にふさわしいと思ってもらえるネタになるものは何か、口頭試験等で述べるとしたら何を取り上げるべきかを考えておきましょう。
技術士試験は技術士にふさわしいかどうかを審査するもので、「技術士にふさわしい」とは技術的課題に対する課題解決能力があること、的確に問題点を把握して、創意工夫により解決を図る能力があることだといわれています。
ユニークなもの、発見や発明を含むもの、発想の転換があるもの、普通と異なる視点や特徴があるものがあれば、それをネタにするとよいでしょう。大きなプロジェクトである必要はありません。

二次試験の業務経歴票の内容発表

1月7日付で「平成25年度の試験の概要」が日本技術士会から発表され、二次試験の業務経歴票がどう変わるのか具体的な内容が明らかになりました。

従来の経験論文は、A4用紙2枚以内、図表を含め3,000字以内でしたが、平成25年度は、
業務経歴の詳細欄に○を付したものについて、
業務内容の詳細(当該業務での立場、役割、成果等)を記入。
形式

  1. 原則ワープロで作成するものとするが、手書きで作成しても良い。
  2. 書式は、720 字以内(図表は不可)としワープロで作成する場合、48 文字×15 行、文字の大きさは、原則10.5 ポイントとすること。

受験申込時に、簡易版の経験論文を提出するようなイメージです。量は少ないですが、受験申請時に提出するので、内容には注意が必要です。従来の経験論文の内容に対するアドバイスを参考にしましょう。
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